オオスカシバの鱗粉落とし
うれし悲しいこの季節、昆虫が活発になり、日々虫たちであふれる日常は、いよいよ訪れたシーズン本番でうれしい反面、いろんなものが一気にやってくるので、体一つでできることが限られるのが悲しいともいえます。せめてカメラの台数でカバーできるものは、インターバルタイマーをセットしてそのままとか、蛹室の変態シーンなんかはけっこうこれでやってしまいます。けれども、自らの眼でシャッターチャンスを構えるシーンは時間を要し、成果が出ればラッキーですが、成果が出ないという結果もあるわけです。ただ時間の使い方は虫に合わせることもあれば、逆に合わせてもらうこともあります。オオスカシバの羽化が撮りたくて、昨年の秋に飼育していた蛹が10個体ほどおりました。1個体が羽化し、そろそろと蛹の様子を観察しながら次が羽化するのを待っていました。アゲハの蛹のように、翅の色が透けて見えることもなく、外観的な前兆は黒っぽくなってから腹部体節が伸びること以外はありません。食事の時も傍らに置きながら様子を見つつ、さすがに眠たいというときは思い切って冷蔵庫に入れてしまいます。昨日になってパソコン作業をしつつ、傍らに置いてチラ見していましたが、「はっ!」と思ったときはすでに蛹からはい出ていました。「まあ、翅が伸びるシーンが撮れれば」と撮影しつつ、どうしても撮りたかったのが鱗粉を振るい落とすシーンでした。翅が伸びきってからの沈黙が1時間続く中、さすがにしびれを切らして、再び冷蔵庫に入ってもらうことになりました。そして、今日の朝になって冷蔵庫を開けると、昨日のままの姿にホッとしつつ、枝先に付けてスタンバイします。その後、1時間ほど待ってやっと飛び立ちました。思ったほど派手な鱗粉の飛散はなく、様々なパターンがあるとは思いますが、飛び立つ瞬間まではけっこう鱗粉は付いているようで、飛び立った直後の羽ばたきで、一気に残りの鱗粉が落ちるという結果でした。