トノサマバッタの産卵

秋ネタの定番のトノサマバッタですが、それなりに一生は撮影済みです。ただ、せっかくのシーズンに、新たに撮影を試みつつ、「産卵シーン」の撮り直しには悪戦苦闘しました。腹部の先で土中を掘削しての産卵は、長い産卵管を持たない直翅類として、とても面白い産卵工程だと思います。また、泡物質に卵をくるみながらまとまった数を産卵する様子は、一卵ずつ産卵するコオロギ上科と大きく異なり、むしろ別目のカマキリ類と共通します。そんな、バッタの産卵行動の撮影は、産卵をもよおした個体を目視で選抜することからはじまります。撮影セットに移すとほどなく産卵行動に移りますが、土中に腹を挿しこんだだけの映像は難なく撮れます。しかし、昆虫写真を志す人間は断面を削り出し、土中の様子を映し出すという使命感のようなものがあり、職人のような作業を強いられます。バッタ類の産卵行動のプロセスは、掘削行動からはじまり、土中に空間を作ってから産卵が始まります。しかし、土中でどの段階まで作業が進んでいるかがわかりづらく、タイミングを見誤って掘削行動中に断面を削ると、大概は違和感を感じて産卵を中止します。しかし、いざ産卵が始まってしまうと中断ができず、断面を削ったあとも産卵が継続されます。この絶妙なタイミングは時間的データも重要ですが、土の硬さや個体差で前後します。失敗を何度か繰り返して、ようやく産卵の工程が映像化できました。

トノサマバッタの産卵
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