フレーベル館 「しぜんキンダーブック」4月号 ちょう
昨年、精力的に撮影した仕事のひとつとして、フレーベル館様の幼稚園向け月刊誌「しぜんキンーダーブック」があります。テーマは「ちょう」ですが、中身としてはナミアゲハの生活史をメインに伝えています。お話をいただいたときに、私なりのストックのアゲハチョウの一生写真がだいぶ古いものになりつつあると感じていたところで、これを機に撮り直すよい機会と思い快諾させていただきました。ちょうど一年前の今頃に撮影に着手し、春型アゲハの産卵から撮影に取り掛かりましたが、やはり、何度やっても、この手の仕事は苦労の連続で簡単にはいきません。中でも羽化シーンでは、前兆がはっきりとわかっていながら、なかなか羽化せずににらめっこ状態が1時間以上続きました。トイレに行きたくなって、同僚に「少し見ていて!」と頼みつつトイレから帰ると、私がいなくなったのを見計らったかのように羽化していたことがありました。同僚からは「よほど怖い顔をしてみていたんじゃないの」と言われ、確かに、そんな顔だったかもしれないと反省しました。アゲハも生き残るための本能として、抜け殻越しに見える世界を見ているはずで、科学的に説明しづらい「殺気」というものを感じながら羽化をとどまっていたのかもしれません。私はなにも写真を撮らせてもらえればよいだけなのですが、仕事をこなすというプレッシャーが、そんな表情と空気感を作っていたのかもしれません。とはいえ、アゲハたちのお世話になって、この本を出版できたことは感無量ですし、この本を手に取っていただいた保育士さんや園児さんたちが、「チョウ」そして「昆虫」に興味を持っていただけるきっかけとなったとしたら、それはこの上ない喜びです。