ハリガネムシ
9月20日に開催した「むしむしトーク」カマキリの回では、カマキリと言えばつきもののハリガネムシの話題も含めました。質問では、むしろハリガネムシについてが多く、何かと話題性として注目度の高さを感じました。著書である「さすらいのハンター カマキリの生きかた」でもハリガネムシの脱出シーンが捉えられていますが「どうしてハリガネムシに寄生されているカマキリだとわかるのか」というするどい質問がありました。私なりの感触ですが、ハリガネムシに寄生されている個体は、とても荒々しく威嚇をしやすいと感じます。そして、扱っていると、腹の先からひょっこりとハリガネムシが顔を出すことで寄生されている事実を確認できたことが何度かあります。宿主の危機的状況を感じて、脱出するべきか迷いながら様子を見つつ再び腹に収まるという行動をします。場合によっては勢い余って完全に脱出してしまうこともあります。そして、寄生されている個体の腹は、それほど膨らんでおらず、触った感じもやや硬いものが入っているという感触もあります。そして、今年になって新たに寄生されている個体の面白い習性がわかりました。昆虫の森の園内に常設のライトトラップがあるのですが、この時期に灯りに集まるハラビロカマキリの寄生率が極めて高いということです。近年の研究で、寄生された個体が水辺に引き寄せられる要因として、水面反射が一因するという研究成果を目にしますが、何かそれに関連する結果なのかもしれません。そんなこともあり、ライトトラップに集まったハラビロカマキリを使って、ハリガネムシの脱出に至るシーンの撮影に挑戦してみました。
池の端にハラビロカマキリを置いて様子を見ます。
すると、躊躇なく水に飛び込んでいきました。
水に入りながらも、特に暴れもがくという様子もなく水面を漂います。すると・・・
予定通りというか、ほどなくしてハリガネムシが腹の先からにゅるにゅると脱出してきました。しかも2匹は想定外でした。昨年は1匹の宿主から5匹も出てきた個体を見ています。この、カマキリが入水したという信号を、体内のハリガネムシがどのように受信しているかも気になります。水の中で生まれたハリガネムシが、カマキリの体内に侵入する過程だけでもドラマを感じますが、再び水に戻るべき必然性の中で、カマキリを操るという進化のストーリーにはロマンすら感じます。最近の研究成果で「宿主から寄生虫への大規模遺伝子水平伝播の可能性」はまさにそれを紐解く内容です。