「秋の野山の昆虫展」2023準備完了

ぐんま昆虫の森が開園して、最初に「季節展」という枠組みを設けてはじめて開催したのが「秋の野山の昆虫展」でした。鳴く虫は、秋の定番的な話題ですから、毎年行うという位置づけで「季節展」というカテゴリーを作り出しました。ただ、広い会場を埋める話題として、鳴く虫だけにとどまらず、バッタ、カマキリ、アカトンボの話題もそろえての内容です。気が付けば今年で18回目を迎えます。毎年、展示切り替えでは、職員が総出で段ボールベースのパネルを移動し、夏の展示との入れ替え作業を行っています。まだ、残暑厳しい時期に過酷な作業です。一通りのパネルと什器入れ替え作業が完了したのち、生体展示ケースを作り上げ、床配線を仕上げるのが私の役目ですが、私自身にとって厳しい一週間です。

「秋の野山の昆虫展」VOL18会場

私なりのこだわりは、生体展示ジオラマで、それぞれの生息環境イメージの再現です。

豊島園昆虫館時代のジオラマづくりでの課題が、当時は照明器具が蛍光灯のみで、照度の限界からディスプレイしたい植物が限られたことです。それが、メタルハライドランプの普及により、植物選択の幅が広がり、結果としてディスプレイ表現の幅も広がったということです。時代の流れは今やLEDですが、現状の展示においてはメタルハライドが現役で活躍しています。

生体展示 左からスズムシ・エンマコオロギ・ミツカドコオロギ

チガヤの草原に多い、マツムシとオナガササキリのディスプレイは、園内の草原からプレートを切り取って使用しています。さすがに長期の維持はできませんが、展示期間の2か月間は枯れずに維持ができています。また、差し替えが必要な餌植物の水差し用筒をセットして仕上げます。

チガヤの植栽プレートを利用したマツムシの生態展示 
餌植物のツユクサが差し替えできる筒を中央に設置

そのほか、ディスプレイ植栽として使えそうな植物のポットを維持管理して、寄せ植えしながら仕上げます。

寄せ植えで作成したクツワムシの生態展示 

それでも、コオロギ類6ケース、キリギリス類6ケース、バッタ類3ケース、カマキリ類4ケースを仕上げるのは大変な作業です。かつては、あれもこれも見せたいと、もっと展示数は多かったのですが、歳をとったせいでしょうか。準備とメンテナンス労力を考えて現在に落ち着いた感じです。

会場準備は短期決戦ですが、大事なのは展示する昆虫をそろえる作業です。鳴く虫の王道であり希少種の「マツムシ」「クツワムシ」の展示個体の準備は簡単ではありません。かつて、採集でまかなっていましたが、コロナ禍での県外渡航制限以降は、飼育技術を駆使して累代飼育でまかなっています。裏方の飼育担当者としては仕事が増える中、見事に継続できていることに感服します。

ぐんま昆虫の森「秋の野山の昆虫展」は、秋の虫をテーマにしたイベントとしては、日本最大だと思います。

今や、秋の虫を風情として楽しむという文化は過去のものかもしれません。ただ、世界で唯一日本人が持ちえた感性のすばらしさに、気付いてもらいたいと思います。

東都名所 道灌山虫聞之図Famous Places in the Eastern Capital : Listen to Singing of Insects at Dokanyama Hill
歌川広重/画

矢島先生がご逝去後、別荘の遺品整理を行いました。その際、上記の有名な複製画がありまして、お引き取り致しました。矢島先生は、鳴く虫への思いも大変強くお持ちでした。そんな思いを引き継ぎ、日本の素晴らしき文化を後世に残していきたいと強く思います。

みなさまのご来園をお持ちしています。