オオヒラタシデムシの飛翔

身近な甲虫であるオオヒラタシデムシには、飛翔型と非飛翔型があることで知られています。この飛翔形質の多型の理由については、まさに研究者の興味をそそるテーマのようです。様々な研究成果がネット上でも閲覧でき、いろいろと読ませていただきましたが、確信に迫る理由はわかっていないようです。かつて、昆虫の森の中で、昼間に足元を飛翔する甲虫が目に入り、瑠璃色が美しく目立っていたので「なんだこの虫は?」と咄嗟に叩き落したらオオヒラタシデムシでした。「あれ、オオヒラタシデムシって飛べるんだ」と、その時はそれ以上の興味に至りませんでした。昨年はオオヒラタシデムシの生活史を撮影し、こんな身近で、飼育しやすく、飛翔型の不思議というおまけまでつくなんて、あらためてオオヒラタシデムシの魅力を感じていました。そこで、今年は飛翔シーンを撮りたいという目標ができ試行錯誤で挑戦してみました。落とし穴トラップで数十匹採集し、直径が10㎝程度の深めのタッパーに収めます。這い出ることはできませんから、ここから脱出するには飛ぶしかありません。飛ぼうとする個体が飛びやすいように高台を設置しておきました。そのタッパーを40㎝ほどのケースの中に収め、数日間様子を見ることにしました。変化がないまま1週間が経過し、今日になって容器を確認すると2個体がタッパーの外にいました。これぞ飛べる個体の証です。撮影セットを作り、投光器でちょっと熱くして飛びたいモードにしたところで撮影が完了しました。背面から見るオオヒラタシデムシは地味ですが、上翅の裏が青藍色でとても美しいのです。飛んでいるときだけに見えるなんて洒落ていると思いませんか?そして上翅の開き方が特徴的でスーパーカーのドア開閉でよく採用されるガルウィングのようです。オオヒラタシデムシの情報を検索していてちょっと気になったのが、Necrophila japonicaという学名でした。属名にEusilphaもシノニムとして存在します。Necrophilaの直訳は死体愛好者というなんとも変態チックな意味合いが強く、japonicaは日本固有種に充てられる種小名です。ミミズの亡骸に群がる姿の印象は強いのですが、「死体愛好者」という属名はやや過激かなと、身近な環境で分解者として大きな役割を果たすオオヒラタシデムシを、暖かく見守ってほしいと思うのです。

オオヒラタシデムシの飛翔