令和6年度 全国昆虫施設連絡協議会

全国昆虫施設連絡協議会(以下全昆連)は、矢島先生が昆虫施設のさらなる発展と向上を目的として創設されたものです。今更ながら、発足は1990年代ですが、正確な歴史をたどる資料がありません。私は発足から間もない1997年に多摩動物公園が開催地となったとき、当時在籍していた豊島園昆虫館の代表として出席し矢島先生と出会ったことで、ぐんま昆虫の森への転身のきっかけとなりました。そして、今回ぐんま昆虫の森代表として最後の参加となりました。開催地は毎回持ち回りとなりますが、今年度は静岡県磐田市の竜洋町昆虫自然観察公園での開催となりました。発表資料作成では、慌ただしい準備となりましたが、私なりにこの仕事にかかわり、こだわってきた生体展示の手法をまとめる良い機会となりました。「大型甲虫類の展示手法について」を発表して参りました。

令和6年度全国昆虫施設連絡協議会 発表テーマ表紙

この内容については、PDF化し、年内にはサイト内で公表しますので、一読いただければ幸いです。

昨年に引き続き、今年もトップバッターで緊張もしましたが、私なりに伝えるべきことは伝えられたかなと思っています。「おわりに」に書かせていただいた内容ですが、ぐんま昆虫の森の開園当初は、外国産甲虫の生体展示はなく、来園者からは「ヘラクレスオオカブトはいないのか?」という声が多数寄せられました。「里山」という展示テーマの中で、展示設計に組み込めなかったという経緯はあります。しかし、開園直後の知事交代、あり方検討委員会発足、大幅な事業見直しという不本意な事態の中、映像トンネル廃止に伴い、代替展示として外国産昆虫展示の導入に至りました。振り返れば、一般大衆のニーズを展示に組み込むことは大事で、さらに、それをどう見せるかということにこだわり続けてきたと思い返します。昆虫施設のあるべき姿として、生きた昆虫の姿をいきいきと表現するという展示は、欠かせない要素だと思います。ソフト事業も当然大事ですが、箱物である以上、魅力ある展示を追求することの重要性は、永遠に変わらない優先的事項だと考えています。

令和6年度全国昆虫施設連絡協議会 発表の様子

全体で9つの研究発表があり、各園館どれも興味深い内容ばかりでした。足立区生物園 網島さんの発表した「生物園におけるミュージアムショップの戦略的な運営方法」は印象深い内容でした。網島さんがショップ担当になってから、売り上げが年々右肩上がりとなり、生々しい売上高の数字化されたグラフでは会場からどよめきが起きました。ぐんま昆虫の森も、いかに運営費(ざっくり2億円)の税金負担を軽減させるかは未来に向けた課題であり、歳入を増やすべき取り組みが今後の運営のカギとなると感じています。単に値上げではなく、来園者の満足度を上げるべき展示や園内の整備(リニューアル)を果たしたうえで、収益増を図るべき画策をセットで考えるという「未来プロジェクト」なるものが動き始めていますので、大変参考になりました。

竜洋昆虫自然観察公園といえば、ゴキブリ研究で話題を呼んだ柳澤静磨さんが職員として在籍し、展示もゴキブリ愛があふれていました。こういった展示の特色とフロントマン的職員が活躍する施設は少なく、若手スタッフで構成され、少数精鋭ながら施設の魅力を前面に発信していると感じました。懇親会では、館長の北野さんによるサプライズがあり、最後の機会となった私に、ねぎらいのセレモニーを企画していただきました。本当にありがとうございました。

竜洋昆虫自然観察公園館内展示の一部

会長からは「準会員として残れば・・・」とお気遣いのお言葉もいただき、今後も可能であれば参加させていただきたいと考えています。

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