清里遠征 蛾類合宿 その3
いよいよ最終日となり、天気は予報通りで概ね晴れです。宿を後にし、やや標高を上げた場所に移動しました。ヤマツツジとズミが満開で、平地でいえば4月下旬の季節感です。昨日の挽回とばかりに、みなさんのギラギラとした視線でイモムシ・ケムシ探しが始まります。
開始早々に横田さんの「イター!」という声に、一同が期待を込めて集まります。今回の遠征で、皆が見たいと期待していたモクメシャチホコが見つかりました。道脇のイヌコリヤナギに孵化してまもない幼虫が付いていたのですが、なんと、そのポイントは、私が先に見て通過していた場所で、自分のふしあなぶりを露呈する結果にもなりました。
幸先良い発見に、皆さんのテンションも上がります。


卵の殻も発見でき、株の一部に集中して20個体ほどが見つかりました。その後も歩く過程でポツリポツリと追加があり、葉に付いた卵も見つかり始めます。

さらに、標高を上げて少し移動した先では、画になる卵塊が見つかりました。だれかが「どこかに成虫がいたりして」などと、冗談を言いつつ、私は「そういえば、成虫は白っぽくて大きいし割と目立つよね」などと返していました。そして・・・
卵塊がついたイヌコリヤナギは丈が腰高ほどしかない幼木で、みなさん順番に撮影しつつ、一番最後に撮影していたJさんが突然奇声を上げます。皆がどうしたどうしたと集まり「これって!・・・」と指さす先にいたものが、なんとモクメシャチホコの成虫でした。

今回の遠征の最高潮に達した感があった一瞬でした。まさかの成虫まで見られるとは。モクメシャチホコの分布はやや局所的で、横田さんによると山梨県での記録は最近ほとんどないとのことです。それにしても、発見者Jさん大手柄でした。「今日はモクメ記念日だ!」と皆さんご満悦でした。
さて、残された時間も少なく、山を一気に下ってポプラがあるという公園に向かいます。ポプラと言えばオオモクメシャチホコです。日曜日とあって人も多く、何か異様な空気感を放つ一行の公園散策が始まります。

到着早々に一本立ちのケヤキを見上げると、カバキリガ、ヨツボシホソバ、ホソバトガリエダシャクの幼虫が見つかります。

周りの自然環境が良い場所での公園植栽は、とてもイモムシ・ケムシは探しやすく、期待が膨らみます。見渡したところ高木のポプラが見えず、園内図で確認するとケーブルカーで上がった山頂広場でした。山頂に移動すると十数本のポプラが並び、端から樹皮にオオモクメシャチホコのマユがないか調べていきます。時期的にはぎりぎり羽化前で、あるとすれば越冬後のマユ内蛹のはずですが、古い痕跡はそこそこ目立つものの、新しいマユは見つかりませんでした。最後の1本に差し掛かり、樹皮をなめ回すようにマユ探しをしていると、偶然目に入ったのが苔に擬態したSinarella属のクロミツボシアツバかミツオビキンアツバの幼虫でした。

まだ見たことがないという方が多く、撮影会が始まり少しはお役に立てたかもしれません。

いよいよ時間が押し迫り、「いいものが見られた」とこれが最後の発見と思いきや、その後に思わぬおまけが・・・
帰りのケーブルカー乗り場に向かう途中、Yさんが植え込みのバラの葉裏にいる美しいゾウムシを発見。すぐにネットで調べてオオアオゾウムシであることがわかりますが、私としては初めて見る種類です。「私が60年生きてきて初めて見るくらいだから絶対珍しいはずだ!」と断言しましたが、のちに調べてみるとそうでもないみたいです。

ケーブルカーの到着待ちをしていると、私だったら絶対見ないであろう、セイヨウベニカナメモチの生け垣をのぞき込んだMさんが「ナニコレ!?」と。ケーブルカーが到着し、すでに皆が先に移動している中、それを見せられた私は「あ!それ!いいイモムシ!」名前が出てきません。とりあえず時間がないので枝ごと切ってケーブルカーに駆け込み乗車します。横田さんに確認すると即答「それはエゾモクメキリガ!」

シャチホコガ科のように反り返るヤガ科として、ポーズもさることながら、色彩的にも魅力的な種類です。広食性ですが、まさかセイヨウベニカナメモチに付くとは・・・
ケーブルカーが到着後に、まるでモデルの撮影会のごとく、最後の大収穫に皆大喜びでした。

名残惜しくも、その後に解散となりましたが、久しぶりにワイワイと皆さんで散策する楽しさを味わいました。たくさんの眼で探すことの効率の良さや、経験と知識の向上と、今回の合宿の成果は大きかったなと。参加された皆さんには大変お世話になりました。またどこかでご一緒できる日を楽しみにしています。