「夏の小川に輝く宝石、オニヤンマ」
今週は展示の切り替えで、肉体労働の日々を過ごしながらげっそりと疲れ切った自分としては、小学館様より本日発売の「夏の小川に輝く宝石、オニヤンマ」は、達成感を感じつつ、老体に鞭打ち打って頑張れる気持ちになれました。あとがきにも書かせていただきましが、構想は10年前にさかのぼります。私なりに「トンボ」という昆虫の魅力は、幼虫期は水中で、成虫は空中で過ごすという空間利用の大きな転換だとか、オスは成熟するとメスの産卵する場所をパトロールして、最後の最後まで交尾に挑むことで、自身の遺伝子を残そうとする執着だとか…高度な飛行技術をいち早く地球上で獲得したことは紛れもない事実で、1億年以上にわたり繁栄し続けてきたことがそれを裏付けます。子供の頃を振り返り、オニヤンマの思い出はたくさんあります。小学3年生で移住した静岡県御殿場市の家には、すぐ裏に小川が流れていました。夏休みは玉網を持って掬うのが日課でしたが、石がごつごつした浅瀬で、オニヤンマが産卵している場面に遭遇しました。おそらく、その時がオニヤンマの産卵を初めて見たと思います。羽音を立てながら産卵を繰り返す様子を目の当たりにして、ドキドキしながら夢中で玉網をかぶせました。しかし、石があり、そのすきまから半身を乗り出してもがくオニヤンマは、ほどなく脱出し飛び去っていきました。くやしさのあまり、心臓の鼓動がしばらく鳴りやまなかったことを今でも鮮明に思い出します。私が幼少期に強いあこがれをもった昆虫のひとつであり、この歳になって、私なりの思いを絵本という形で表現できたことに感無量の気持ちと、撮影や出版にかかわっていただいた方々には心より感謝を申し上げます。