オオムラサキ1齢幼虫の脱皮
暑い日が続きますが、これからの日本の夏はこんな感じなのでしょうか。温暖化においての昆虫の異変といえば、分布域の北上が顕著に見受けられますが、本来の分布域の昆虫層においては冬の温度上昇が越冬を妨げるという話も聞きます。オオムラサキの発生量が今年は少ないという話も聞かれますが、温暖化とすぐに結びつけるのはやや乱暴な話だと私は思います。「環境要素」は複雑な構成であり、温暖化のみならず開発による森林減少など様々な要素が変化をもたらしていると考えています。ぐんま昆虫の森は45ヘクタールほどの雑木林を主体としたエリアですが、オオムラサキにおいていえば、顕著な減少は今のところ見受けられません。これは幼虫の越冬数調査や、樹液に集まる成虫数の感覚的な視点での話です。オオムラサキという指標生物において、温暖化の影響以前に、45ヘクタールほどの雑木林をそれなりに維持管理すれば、衰退は免れるというひとつの環境整備のモデルケースであるとも考えます。
毎年、初夏の季節展で幼虫を展示する都合上、越冬幼虫を採集して利用していますが、常設のライトトラップでメスが捕獲できたので、採卵を試みてみました。エノキの鉢植えにネットをかぶせ、パイナップルを餌に飼育してみましたが、なかなか産卵せずに産み渋っていたところ、ようやくネットの部分に数十個の卵を産み残してくれました。そこで孵化した1齢幼虫たちが1齢~2齢へと脱皮を行うピークとなり、撮影を試みてみました。
この手の脱皮シーンはインターバルタイマーに任せていて、15秒間隔でシャッターを切っています。高倍率撮影でのオートフォーカスは怪しいので、ピントは固定ですが、やや幼虫の動きを見越したピントの山の設定が甘く、反省を残しつつ、ギリギリ使えるカットが撮れたかなという感じです。
1齢の丸顔坊主頭から、立派な角を備える2齢への脱皮は、なかなか大きな変化だと思います。計測はしていませんが、頭の大きさに対しての角の比率は、おそらく全齢期で2齢期がもっとも大きく占めると思います。
季節の中で虫たちの変化は著しく、気が付けば秋の虫たちが最盛期に向かって羽化のピークとなりつつあります。今年は気温が高い分、秋の虫も生育が早く、すでにオオカマキリの成虫が目につき、エンマコオロギも鳴き始めています。