ぐんま昆虫の森 昆虫専門員の募集について
私の退職に伴い、群馬県では、ぐんま昆虫の森「昆虫専門員」の募集をしております。20年ぶりの募集と記憶しますが、ぐんま昆虫の森建設以降、全国的に昆虫施設の新設はほぼなく、この仕事に就くという門の狭さを感じます。「好きなことを仕事にする」一般的にとても恵まれた境遇として捉えられるでしょう。私自身、その境遇の中での35年間を振り返り、楽しかったというよりも、苦しかった、大変だったという思い出が上回ります。仕事は仕事、成果を積み上げることのプレッシャーは、どんな仕事でも同じです。ただ、それが、好きなことか、どうなのか?確かに好きなことであれば頑張れるモチベーションも違うと思います。結論的に、私としてはこの仕事に就けたことは人生最大の幸運な出来事だと思います。
好きなことを生業とすることが達成できたとしても、今度は生計の壁が立ちはだかります。一般的に昆虫施設の仕事の給与面での待遇は決して良いものではありません。全国的に昆虫施設は指定管理者での運営が目立ちます。施設は行政の所有ですが、運営は一般企業や財団に委ねるというしくみです。ぐんま昆虫の森は群馬県直営ですから、地方公務員の給与体系は同業者の立場では、やや恵まれているのかなとも思います。
行政直営の負の構造として、あくまでも一般論ですが、ぐんま昆虫の森は、類似施設全般と比較して、また、施設規模に対しても専門職(昆虫専門員)の定数が3名という数字は極めて少ない人員だと思います。その分、仕事量も多いと私なりに感じています。また、組織的職場環境として定数10名のうち、専門職3名以外は常に2-3年で人事異動しますから、組織としてのモチベーションは、良いときもあり悪いときもありの常に不安定な情勢です。
2005年の開園。そして、2007年の知事交代による冬の時代は3期に渡りました。しかし、現知事は「よい施設だ」と評価していただいているようです。20周年を目前にし、リニューアルの話もあり、風向きがどこで変わるかは本当にわかりません。追い風となりつつある今、新規で採用される方への期待は大きいかと思います。
昆虫にかかわり、多くのお客様にかかわり、昆虫の素晴らしさを啓蒙できる仕事としてのやりがいは、この仕事が唯一だと思います。この職で大切なことは、知識や技術、発想の中で企画を具現化し、多くの方々に「伝える」ということに尽きます。ただ、そこには大きな壁が立ちはだかります。組織である以上、一員としてどう立ち回り達成できるかだと思います。
私とは入れ替わりになりますから、共に仕事ができないことが残念ではありますが、矢島先生が創り上げた「昆虫施設」という文化を継承する大役を担う若者に、是非とも挑戦していただきたいと思います。