ぐんま昆虫の森の雑木林
クロオオアリ取材からいったん離れて、梅雨入り前の貴重な晴れ間なので、ぐんま昆虫の森を歩きました。今や一人の利用者として、最低限のカメラ機材を持って歩いています。職員時とはだいぶ撮影スタイルが変わりました。昆虫の森は比較的起伏の多い地形ですから、最低限の機材とはいえ、それなりに重いので、園内をぐるりと徒歩で歩くと結構なの体力を使います。目的は昆虫撮影ですが、運動不足の解消、体力の維持という意味合いもあり、撮影の成果が今一つでも「よい運動になった!」と考えています。付け加えて、ビールもおいしく飲めます。まだ5月なのに最高気温は30℃まで上がった日ですが、湿気がない分、林内の日陰は涼しく心地よい体感です。メマトイが多い時期で悩まされますが、これもひとつの自然度の高さゆえです。南側の外周路東から東西尾根を結ぶ坂を上り始めるとハルゼミの合唱が響き始めます。すがすがしい初夏の雑木林の景観は、ぐんま昆虫の森の魅力のひとつです。

この南面に広がる雑木林は、私が気に入っている景観の一つです。開園前の2003年あたりだっと記憶しますが、このエリアは南面を更新区として定め、伐採が実施された1区目です。その後、5年周期で更新が継続する予定でしたが、管理費の削減で更新計画は2区目で止まりました。それから約20年が経過し、直径が20㎝ほどのクヌギが並ぶ雑木林の景観となりました。現在は、下刈りが年に1-2回実施され、かろうじて景観を保っています。
群馬県平野部に限らず、全国的に見ても、良好に維持される雑木林はいまや皆無に近く、この景観こそが文化遺産だと思っています。まあ、世代の移り変わりや文化の変遷の中で、日本人の感性として「自然美」のとらえ方も変化し、雑木林が美しいと感じる人は今や少数派かもしれません。
大切なことは、文化や景観にとどまらず、良好な里の自然がそこにあるということで、生物多様性に満ちた「里山」といわれる環境を後世にどのように残し、その価値を伝えていくかは大きな課題だと思います。
「生物多様性国家戦略」というものがあります。ぐんま昆虫の森の存在は、まさに群馬県としての取り組みの一環として評価されるべきですが、組織としてはぞんざいに扱われ続けていることは悲しく思います。