国営武蔵丘陵森林公園 散策
10月も終わりに近づきますが、埼玉県比企郡にある国営武蔵丘陵森林公園に出かけました。
昨日一昨日と、晴れても風が強い日でしたが、風もなく最高の散策日和です。
昆虫写真が趣味の友人と3人で歩きました。
南口から入り、園内マップを見ますが、その広さにあらためて驚きます。
一日では回り切れないのは確実で、西側エリアを中心に歩きはじめます。
入園早々に目に入ったのがカラムシの葉上で交尾姿勢のヨモギハムシです。
日当たりのよい場所にいて、光沢の強い体表は、色が出にくい被写体です。逆光方向からカメラを向けて、レフ版をいれて影を補い、体表側面に反射を入れてみました。

実が色づいたカキノキがあり、覗き込むと、熟して崩れた実にウラギンシジミがのきれいなメス個体が来ていました。
カキを味わいつつ翅を広げたり閉じたりしていて、もっとも翅が広がった時を狙って背面から写してみます。

アスファルトの道路を大きなヤガ科幼虫が横切ります。
かなり大きく見えて、レアな幼虫ではないかと思いつつ、「これハスモンヨトウだよ」と言われ、「確かにそうだ」と納得しました。

道脇の樹木の幹にキノカワガを発見しました。静止する場所をよく心得ています。成虫越冬ですから、冬の情景であったらかなりよいシチュエーションだったと思います。

マント・ソデ群落の解説看板があり、私としては目を引きました。
というのも、図案と文字が手描きだからです。昔は看板文字を手作業で書き込む職人技術がありましたが、サイン看板の歴史変遷で今や皆無です。
この過渡期が1990年代だったと思います。
アクリル板に直接書き込まれた図案と文字はやや劣化しつつも、看板自体が重厚な作りで、まだまだこの先も現役で持ちこたえられそうなコンディションでした。
文末に、クイズというか、「考えて!」という一文に、当時の製作者の思いが感じられました。

国営武蔵丘陵森林公園は昭和49年に開園した全国初の国営公園です。丘陵地の自然を生かしつつ、遊具や芝生広場、飲食施設も併設し、総合的な公園機能を果たす中で、結果的に森林環境が維持されていることは重要だと思います。その広さはなんと304ha(東京ドームの約65倍)ですから、ぐんま昆虫の森の6倍です。園内は要所を行き来する巡回バスがあるほどです。

さて、花畑ではオミナエシやフジバカマも花期を終えていて、来年はもう少し早い時期に来てみたいと思いました。
ちょうど見頃の花がホトトギスで、にぎやかに咲いていましたが、その花も葉も食べつくしたであろうルリタテハの蛹が茎に付いていました。

淡々と続く舗装道路の林縁で、同行者のリョウさんが、「これはなにかと?」探し出したのが・・・・
マダツマキリヨトウかと思いましたが、かつて見たときの印象とやや違って見えたので、近縁種のキスジツマキリヨトウも疑い調べてみます。

結果としてはキスジツマキリヨトウでした。マダラツマキリヨトウでは第七腹節の背面の紋がないことが区別点ということです。
私は初めて見ることができましたので、リョウさんお手柄でした。

ちなみにリョウさんは、俳優の吉沢 亮さんと同姓同名です。
かなり以前から、ぐんま昆虫の森のフォトコンテストに毎回応募していただき、たびたび受賞してきた腕前です。
そして、そのやや先にはシダの一種の群落があり、追加個体がいそうなので探していると・・・
背面の紋が褐色ではない個体に遭遇します。
キスジツマキリヨトウの体色変異かと思いましたが、調べてみるとムラサキツマキリヨトウの体色と合致します。
ツマキリヨトウ類は本州だけでもいくつかの種が生息しますが、幼虫体色だけで断定できるのかよくわかりません。
いずれしても、立て続けに興味深いものが見つかりました。

日も傾き始め、園内図を見ながらそろそろ折り返すこといにしますが、せっかくなので別ルートを試みます。
やや歩くペースを上げつつも、キョロキョロと周囲を見ていた時でした。
樹液の出ているコナラの幹で、オオスズメバチを食べているオオカマキリに遭遇します。

同じ幹では、オオスズメバチが6匹ほどいましたから、場合によっては形勢が逆のこともあり得ます。
すでに胸部は食べつくしたところで、残された頭部にかじりつき始めました。
オレンジ色の仮面に食らいつくオオカマキリの形相は、肉食者としての勝者の貫禄が感じられました。

代わる代わる撮影しつつ、よいものが見られたと、皆、満足気な表情で、楽しい散策となりました。

