ウスバカゲロウの羽化

長年にわたり昆虫写真を撮影してきた人間にとって、撮っていて当たり前的なテーマが暗黙知としてあります。それは、定番の売れ筋昆虫の生活史であり、カブトムシやモンシロチョウはランクが高い必須な項目です。そこそこのニーズとして対応しなければならないテーマとして「アリジゴク」もランクはそれなりに高いといえます。20年ほど前に撮影に臨んではいましたが、撮れなかった壁が「羽化」でした。羽化直後の翅を伸ばすシーンはあったので、これまで「まぁいいか」で済ませていましたが、この歳になって「撮らなければ!」とスイッチが入りました。5月から飼育を始めて準備をしていましたが、砂で作られた繭の中の蛹の様子がわからないというのがネックで、繭を割いて羽化を待ったりもしましたが、負担がかかるせいか羽化不全が多いという結果でした。仕切り直して、10匹ほどの一群に餌をたくさん与えて、巣穴がなくなり繭を作ったころに掘り出して、羽化のピークを待つという作戦に出ました。その一群から一昨日2匹が羽化したのを確認し、昨日は夕方からデスクにセットを置いてにらめっこ状態となりました。

ウスバカゲロウの羽化待ち

「待つ」という時間は、この手の仕事をする人にとって試練であり、避けられない行為だと思います。待つことによって結果が得られることがあれば、全くの徒労に終わることも珍しくはありません。にらめっこは限界となり、YOU TUBEで動画を見始めながら、セットをチラ見していましたが、さらに限界となり、缶チューハイに手を出してしまいました。よく知る同業者の知り合いは、こういう時は「あみん」の名曲「わたし待つは」をエンドレスで頭の中で再生すると言っていました。この日は20時まで頑張りましたがギブアップです。翌朝に確認しましたが結局その後も羽化はありませんでした。

羽化は夕刻から夜というのはかなりはっきりした傾向なので、今日は、セットは自宅に置きっぱなしとして本業に出勤しましたが、17時過ぎに帰宅してのぞき込むとすでに1匹羽化して翅を伸ばしている状況でした。次の羽化に備えてカメラをセッティングしている最中に2番目の羽化が始まりましたが、気付いたときは繭から半身以上が出ていて、オートフォーカスがもたもたしているうちに歩き出してしまい失敗です。3度目があるかもわからい中、食卓にセットを置いて晩酌しながら見ているとなんと3度目が、これはかろうじて撮れましたが、とりあえずの抑えに相当するカットに終わります。繭から蛹が身を乗り出して羽化している時間は短く、想像以上に慌ただしい状況下での撮影であることがわかりましたが、果たして4度目があるのか。「きました!」にょきにょきッと姿を現した頭部に、なんとかフォーカスして羽化の瞬間が撮れました。

ウスバカゲロウの羽化

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